クラスのメンバー変数、メンバー関数はだれが触っても良いものと、触るクラスを
限定したい場合もあります。誰が触っても良い物を「public」、自分と子クラスからしか
さわれない物を「protected」(Javaのproctedとは機能が異なります)、そして
自分自身のクラスからしかさわれない物を「private」と言います。
すべてのメンバー変数、メンバー関数をpublicにして、プログラマー達の決め事として
「この変数は子クラスからしか触っちゃダメね」と決めても良いのですが、中には決め事を
守らないプログラマーもいるため、public, protected, privateを決めておけば、文法的に
コンパイラがチェックしてくれます。
なぜ、そんなことをするのでしょう? これは作ったプログラムの保守をしやすいように
です。例えば、ある関数を変更しようと思ったのですが、呼び出し側に影響するかどうかを
調べるために、どこで呼び出しているかを調べたいとします。プログラムが大きくなれば
すべてのファイルを探すのは面倒です。しかしその関数がprotectedであれば、自分と、
子クラスだけを調べれば良いことになります。
基本的にメンバー変数はすべてprivateかprotectedにします。そして参照するための関数と
代入する関数を用意します。なぜこんな面倒なことをするのか、主な理由は3つあります。
1つめはメンバー変数の型を「int」から「double」に変更しようとした場合、参照する場所と、代入
する場所の2つに影響してきます。publicな変数ですと、プログラム全てに渡って、この変数
を参照する場所と代入する場所を探すのは面倒な作業です。それに対して、関数を探すのは、
比較的容易だからです。
2つめは、このメンバー変数は他のクラスから参照しても良いけど、値を変更するのは
ダメ、というような変数があったとします。この場合、参照する関数はpublicに、代入する
関数はprotectedかprivateにすればよいのです。
最後に、マルチスレッドプログラムにした場合です。マルチスレッドプログラムでは、
複数のスレッドが同じ変数にアクセスする場合があります。例えば、あるスレッドがリストを
ソート中に、別のスレッドがそのリストを参照した場合、矛盾が生じてしまいます。
このような場合は、「セマフォ」という、リストを参照する権利を与え、権利があるスレッド
だけがリストを参照したり、いじったりできるようにします。あらかじめ参照するための関数を
用意しておけば、セマフォの処理を組み込む場合も、その関数をちょっと直すだけなので、
簡単です。
このように、変数や関数にアクセスするできるクラスを制限することで、あるクラスを
部品のようにすることができます。部品のようになったクラスは別のプログラムを作るときにも
利用できます。例えば、Visual C++ではMFCというマイクロソフトがあらかじめ作成して
くれた便利なクラスがたくさん用意されており、通信をしたいと思えばそのためのクラスを、
ファイル操作をしたければそのためのクラスを、プログラマーが使用するだけですので、
プログラムが簡単に書けます。
また、通信をするためのクラスを利用しようと思った場合、通常その中身がどんな
プログラムになっているのか、使う人(プログラマー)は知る必要がありません。つまり
通信をするためのクラスの中身はブラックボックスということになります。
このように、中身を知らなくても部品のように使えるように設計することを
「カプセル化」と言います。