トップ->科学おもしろ百科->食中毒にご注意を!
食中毒にご注意を!


梅雨ころから夏に向けて食中毒がいちばん多い季節を迎えます。

食中毒は集団発生すると大きなニュースとなるため、一般的に「飲食店や学校、病院での食事、仕出し弁当」などが原因で起こるものと思われがちです。しかし、実際は、かなりの多くの食中毒が一般家庭で起こっていると言われています。
これからの時期、食中毒を起さないためにも、食中毒の原因を知り、正しく予防しましょう。


<食中毒の現状>

  私達をとりまく衛生環境は、ここ20年間でずいぶん良くなったにもかかわらず「食中毒」の患者数は減少していません。 むしろ、'95年以降は、サルモネラ菌やO-157による食中毒が増えたことで、発生件数は増える傾向にあります。 一般的には食中毒は夏場に多く発生します。これは細菌のもっとも繁殖しやすい温度が37〜40℃であり、食材や食品の中で繁殖しやすいためです。しかし、暖房が行き渡り、快適な環境になっている今日では、寒い冬の時期でも、毎月1,000人以上の食中毒患者が出ていると言われています。

〜トップへ戻る〜







<主な食中毒の原因菌と特徴>

  食中毒の原因のほとんどは「細菌」によるもので、全体の約95%を占めています。
(右図「食中毒の原因」参照・・'99年厚生省統計より)









食中毒の原因になる細菌(食中毒菌)の主なものの特徴
感染の仕方
菌の種類
潜伏期間
症状
住みつく場所
感染侵入型

 細菌で汚染された食品を食べた後、細菌自らが腸管を攻撃し、症状が引き起こされる

サルモネラ菌 10〜72時間 発熱(主症状)、粘血便、腹痛など 卵、肉など
感染毒素型

 細菌で汚染された食品を食べた後、細菌が腸管で毒素を出し、その毒素によって症状が引き起こされる

腸炎ビブリオ 5〜20時間 下痢、腹痛、発熱など 海産の魚介類
病原性大腸菌(O-157の場合) 3〜7日 下痢、腹痛、血便など 動物、人の腸管
毒素型(生体外毒素型)

 細菌が出した毒素によって汚染された食品を食べることで、症状が引き起こされる

黄色ブドウ球菌 約3時間 嘔吐(主症状)、下痢、腹痛など 人の鼻咽喉
ボツリヌス菌 10〜40時間 複視、発声障害、嚥下障害、呼吸障害など 嫌気性食品(真空パック製品、缶詰、ビン詰など)

*それぞれの食中毒菌について「社団法人 日本食品衛生研究所」のHPに詳しく掲載されていますのでご参照下さい。(下記表内の菌の種類をクリックして下さい)

☆☆こんな場所に注意!☆☆

食中毒を起こす細菌は、私達の周囲に常に存在しています。
肉や魚、野菜を調理した後のまな板、台所で使用したスポンジなどは、良く洗わないと大腸菌群がかなり繁殖します。

また、流しの周辺など、水けの多い場所、冷蔵庫の取っ手など手に触れることの多い場所は食中毒菌が付着しやすので要注意!

〜トップへ戻る〜

<食中毒予防の3原則>

付けない 増やさない 殺菌する

1. 食中毒菌をつけない・・・きちんと洗浄しましょう!


  • 手を洗う・・・手にはさまざまな食中毒菌が付いています。手を介して食中毒が広がるのを防ぐため、調理前後、調理中の1つの作業の前後、食事前などには、必ず石鹸を使って良く手を洗いましょう。調理中に生肉、魚、卵を使った後は必ず洗いましょう。調理や食事の途中でペットに触ったり、おむつ交換をしたり、トイレに行った場合等も、その後の手洗いはしっかり行いましょう。

  
ポイント:石鹸を使って流水でしっかり洗う。手のひらだけでなく、手の甲や手首、指の間、爪の間までていねいに洗う。爪の間は爪ブラシや歯ブラシなどを利用すると良い


    • 食材を洗う・・・ほとんどの食品の表面は汚れていることが多いので、調理の前に流水でよく水洗いしてから使用した方が良いです。生で食べるものは特に丁寧に繰り返し洗って下さい。
    *野菜は土に接して育つので多くの細菌が付着しています。

    ポイント

    • その1:レタスなどの葉ははがして流水で1枚1枚洗う
    • その2:落ちた菌が再度付着するのを防ぐため、ため水は使わない
    • その3:ひだの部分は指でていねいに
    • その4:水がはねないように(菌が水とともに飛び散る恐れがあるため
    • その5:ちぎって洗っても良い


    • 調理器具を洗う・・・食品に直接触れる調理器具は全て洗剤、漂白剤、熱湯処理などでよく洗浄したものを使用するようにしましょう。
    • まな板や包丁を洗う

    ポイント
    • その1:漂白剤、熱湯などで殺菌し、日光で乾燥させる。
    • その2:できればまな板は、肉・魚介類用と野菜用を使い分ける
    • その3:まな板が1枚の時は、違う食材を扱うごとに十分に洗い流して使う。


    • スポンジを洗う・・・スポンジもきちんと洗わないと食中毒菌が付着したままの状態です。使用したらすぐに洗剤で洗うようにして下さい。
      ポイント:流水ですすぎ、良く絞り、乾燥させる。


    • 流しを洗う・・・調理が終わったら、流しは洗剤の溶液を含ませたスポンジでよく洗って下さい。隅、側面、排水口の周囲や排水口の蓋、三角コーナーの下などもていねいに。


    • ふきんを洗う・・・洗剤、漂白剤で良く洗った後で日光にあてて乾かして下さい。ふきんはこまめに取り替えて使用しましょう。
    • 注意!

      抗菌グッズを過信しすぎないこと!

      抗菌包丁、抗菌まな板などのような抗菌グッズが普及していますが、これは自動的に殺菌してくれることは絶対にありえません。あくまでも「良く洗った抗菌グッズの上では細菌が増殖しにくい」というだけなので、過信しすぎないようにしましょう!



    2. 食中毒菌を増やさない・・・保存方法に気をつけましょう!



    • 汚染を防ぐ:食品を冷蔵庫に入れるときはラップフィルムや保存袋に入れ、ほかの食品に触れないようにします。

      注意!

      冷蔵庫・冷凍庫を過信しすぎないこと!
         ・・・食品を冷蔵庫や冷凍庫に入れても食中毒菌が死滅するわけではありません。冷蔵庫内では菌の活動が鈍くなり、冷凍庫内では活動を停止しているだけです。解凍後の食品や解凍時に出る水分には活動を再開した菌がたくさん付いている危険性があります。解凍は冷蔵庫内や流水で速やかにします。また、夏には冷蔵庫の扉の開閉が多くなります。すると冷蔵庫内の温度が上がり菌が増殖しやすくなりますので、開閉の頻度を少なく、一回の開閉時間も短くした方が良いです。



    • 室温で放置しない:エアコンが効いている室内は、人間にとって快適な環境ですが、食中毒菌にとっても快適な環境です。気温があまり高くなくても室温で食品を放置しないようにしましょう。



    • つくりすぎない:調理をする時は適量をつくり、調理したらすぐに食べるようにしましょう。残ったものは思い切りよく捨てることも大切です。

      *温蔵・・・過熱調理された食品を高温のまま保存するための装置、温蔵庫(あるいは熱蔵庫ともいう)が給食施設などで使用されることがあります。庫内の温度を70〜80℃に保てば菌の増殖を阻止でき、暖かいままで食品を保存できます。一般家庭でも使われている炊飯器の保温も、釜の内部を70〜80℃に保って菌の増殖を防ぐようになっています。 しかし、保存期間が長引くと食品の組織、風味が徐々にそこなわれていきますので、ご注意下さい。

    ちょっと耳より情報!
    *酢漬けや梅干で食中毒の予防は可能か?
    食中毒菌は特に酸に弱いわけではありません。ある研究では、「殺菌効果は認められなかった」という結果も出ているようです。その一方で、「梅干には静菌効果(菌を増殖させない)が認められた」という研究発表もあります。しかし、静菌効果が梅干のすっぱさや、塩分、あるいは他の要因によるものなのかは分かっていません。もし、梅干で食中毒を防ごうとしたら、梅干の中におかずやごはんが並んだような弁当にしなくては効果がないかもしれませんね。


    3. 殺菌する・・・正しい方法で殺菌しましょう!



    夏場はなまものをできるだけ避けるようにした方が安心です。
    食品に付着している細菌は75度以上で1分間以上加熱すると死滅させることができます。食べる前に内部まで良く加熱して、調理後できるだけ早く食べるようにしましょう。
    *従来型の加熱:従来のガスや電気を用いたコンロやオーブン加熱では外部から加熱されるので内部まで加熱されているかどうか注意しなくてはなりません。特にハンバーグや厚みのある肉などは、外部は充分加熱されてこげはじめても内部はまだ生のままの場合がありますので、竹串などをさして濁っていない澄んだ肉汁が出てくることで内部まで加熱されていることを確認します。 フライや天ぷらなどの揚げ物も、厚みのあるものは内部まで加熱しにくいことがあります。そのような場合は、最初は低温で揚げ、次いで加熱温度を上げて揚げるという二度揚げにすると内部まで加熱できます。
    *電子レンジ加熱:電子レンジ加熱では、従来の熱伝導的な加熱法に比べて、けたはずれに短時間に加熱されるのが特徴です。しかし、電子レンジ加熱では、加熱ムラや解凍ムラがおこり均一に加熱されないことがあります。火が通っていないところができるのを防ぐために、途中で時々火をとめてよくかきまぜる、あるいは熱を全体に伝わらせるために途中でしばらく放置するなどして全体が加熱されるようにします。

    〜トップへ戻る〜


    夏になると暑さで抵抗力が落ちたり、体調を崩しがちです。抵抗力が落ちていると誰でも食中毒を起しやすくなるので、生活全般にも気をつけましょう。食中毒が疑われる症状が出た場合は、自己判断せずに早めに医療機関へ行くようにして下さい。


    <参考文献>

    ・厚生省HP「
    食中毒関連情報
    ・書籍:これだけは知っておきたい食中毒・感染症の基礎知識  
    ・書籍:家庭で防げる食中毒  

    〜トップへ戻る〜


    ・ トップページに戻る

    爽快ドラッグ