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血液型

 一般に人に血液型を訪ねると「A型」とか「O型」とか、極稀に「ニイガタ」とか「ガタガタ」とか
答えられる。「ニイガタ」とか「ガタガタ」とかは別にして、「A型」とか「O型」は「ABO式血液
型」と呼ばれる数多くある血液型分類法の中の一番古くから知られているもっともメジャーな分類方法
である。

 ところで、「血液型占い」というのもこの世に存在し、「星座占い」よりも当たる確立が3倍高いと
言われている。なぜならば星座占いでは人を12分割するのに比べて、血液型占いでは4分割しかしない
からだそうだ。(参考文献:チャレンジ!血液型占い)

 占いとはちょっと違うけれども、血液型で性格を分けることもできる。さだまさし氏は「恋愛症候群」
という曲でこのように歌っている。「開き直らねば何もできず、ただ暗く爪を噛み、目が点になって溜
息ばかりのA型。人のことなど考えられずに、大切な花畑平気で踏み荒らしてひんしゅくを買うB型。
今日と明日では自分同士で意見が分かれて、熱しやすく冷めやすいAB型。その内何とかなるんじゃな
いかと思っている内に、自分だけ忘れ去られているO型。」また、警視庁の統計によると変死体に多い
のはAB型だそうだ。

 まぁ、これらを信じるか信じないかは個人の自由だし、「人間を4分割にしないのだから適当なこと
を言えば、何かしら当てはまることがあっても不思議はない。だから信憑性はない。」という人もいる
し、「血液は人間の体の中隅々に流れているのだから、血液型によって多少なりとも性格に差があって
当然だ。」という人もいるのも事実である。

 このように血液型と言えば、ABO式という図式が一般の人々には成り立っているけれども、血液型
の分類法は現在までに100種類以上知られている。Rh式、MN式、ルイス式がABO式に続いて有名
な分類法だ。ここでは、主にABO式についてお話しするが、100種類以上ある分類法のほとんどが
「糖」によって分類されている。

ABO式


 ・Rhとは、アカゲザル(Rhesus)の頭文字をとったものです。1940年、ランドシュタイナーとウィーナー
は人間の赤血球にアカゲザルと共通の血液型抗原がある事を発見し、頭文字をとってRh印紙と名付けま
した。この抗原にDという抗原があるものを陽性(Rh+)、ないものを陰性(Rh-)と呼びます。

 ABO式分類法は1900年に(カール・ランドシュタイナー)K. Landsteinerにより1901年に発見され
た。以来輸血を中心とした臨床面や法医学の領域で重要な対象となっている。この血液型抗原活性は、
主に赤血球膜の糖タンパク質や糖脂質、唾液などの粘液の糖タンパク質に発現されている。抗原として
は下図のようにA型とB型がある。色を付けた部分は共通部分である。

 すなわちA型の糖鎖(抗原決定基)を持つ血液型をA型と呼び、B型の糖鎖(抗原決定基)を持つ血
液型をB型という。共通部分(色づけされた部分)しか持たない糖鎖を持つ血液型をO型と言い、A型、
B型の両方の糖鎖(抗原決定基)を持つ血液型をAB型と呼ぶ。

 ところで、各血液型を決める糖鎖(抗原決定基)を作る酵素をコードする遺伝子をA、B、Oで表す。
そして、A型の遺伝子はAA型、AO型に、B型の遺伝子はBB型、BO型に、O型の遺伝子型はOO
型、AB型の遺伝子型はAB型に分類される。また、A、BはOに対して優性遺伝する。(OはA、B
よりも劣性遺伝する。)メンデルの法則に従うと次のような血液型の遺伝をすることになる。
両親の血液型両親の遺伝子型子供の遺伝子型
子供の表現型
A×AAA×AA
AA×AO
AO×AO
AA
AA、AO
AA、AO、OO


A、O
A×OAA×OO
AO×OO
AO
AO、OO

A、O
A×BAA×BB
AA×BO
AO×BB
AO×BO
AB
AB、AO
AB、BO
AB、AO、BO、OO
AB
AB、A
AB、B
AB、A、B、O
A×ABAA×AB
AO×AB
AA、AB
AA、AO、AB、BO
A、AB
A、AB、B
O×OOO×OOOO
O×BOO×BB
OO×BO
BB、BO
BO、OO

B、O
O×ABOO×ABAO、BOA、B
B×ABBB×AB
BO×AB
AB、BB
AB、AO、BO
AB、B
AB、A、B
AB×ABAB×ABAA、AB、BBA、AB、B
 ただ、AB型は一般にひねくれていると言われているが、その通りで、遺伝子型で表すとABという
以外にもAB/O型と言うのが極希にあり、AB/O型同士の両親からはO型が生まれる可能性も少な
からずある。


Rh式


 ・Rhとは、アカゲザル(Rhesus)の頭文字をとったものです。1940年、ランドシュタイナーとウィーナー
は人間の赤血球にアカゲザルと共通の血液型抗原がある事を発見し、頭文字をとってRh印紙と名付けま
した。この抗原にDという抗原があるものを陽性(Rh+)、ないものを陰性(Rh-)と呼びます。


まれな血液型


 ・AB型Rh-の日本人は少なく、それに該当する方は事故などの時に心配されているのではないでしょ
うか?AB型Rh-の日本人は、0.05%(2000人に1人)の割合しかいないのですが、日本赤十字社では「まれ」
とは扱っていません。これはある程度のストックがあり、血液が必要になった場合でも準備ができるか
らです。
 ・それよりも少ないのがボンベイ型と呼ばれる血液型などです。日本人にはほとんどいないため、万
が一の時でも血液を確保できない可能性があります。日本赤十字社ではお互いに何かあった時のために
日本赤十字社に登録してもらうようにしているそうです。また国内で確保できない場合でも、各国の日
本赤十字社に要請して血液を確保する場合もあるようです。
まれな血液型
I群
Bombay para-Bombay Mk/Mk En(a-) S(-)s(-)U(-)
p pKNsat/NsatMiV/MiVRhnull
Rhmod -D- cD- LW(a-b-)   Kp(a+b-)
Ko Kp(a-b-) McLeod Fy(a-b-) Jk(a-b-)
I(-) Ge(-) Lan(-) IFC(-) UMC(-)
Gy(a-)Hy(-)Ok(a) JMH(-) Er(a-)
II群
s(-)  Fy(a-b+)  Di(a+b-)  Jr(a-)  Do(a+b-)
 I群:日本人においてその出現頻度が極めて低い血液型
 II群:I群よりもやや出現頻度が高い血液型。ただし、Rh-などの場合はI群として扱われる
日本人の血液型の発言率

刑事事件における親子間定例


 ・若夫婦は近所の大病院に入院し、元気な女児に産声を迎えた。健康管理のために新生児室へその子
は移された。しかしその翌日そのかわいい女児は、小さなベッドから姿を消していた。その頃、幼い子
供の誘拐事件も多く、無惨な姿で発見される事例も少なくなかった。その事件は新生児略取被疑事件と
して捜査され、犯人からの身代金要求など何も連絡がないまま、その1カ月後に病院の近くの河川敷か
ら腐敗した子供の死体が発見された。その子供がその夫婦の子供であるかを識別するのに血液鑑定が行
われた。生まれた翌日の事件発生のため写真はもとより血液検査も未検査の事件発生である。さらに腐
食した死体から血液の鑑定を詳細に行うのは困難を有する。捜査ではまずABO式を調べた。幸か不幸
かその検査でその夫婦の子供ではないことが分かった。事件から約半年たった頃、隣接した県警から疑
わしい夫婦がいるとの情報を受け、2回目の血液鑑定を行った。ABO式血液型のみの鑑定では、被害
者や容疑者の夫婦の両方から生まれ得る血液型であった。MN型の鑑定ではもはっきりと断定ができず、
Ss型という鑑定を行い、この鑑定でこの夫婦は生まれてから約半年ぶりにわが子に再開できた。
(参考文献:血液型は語る―親子鑑定と日本人の起源)

刑事事件での血液鑑定


 ・刑事ドラマなどでお馴染みのルミノール反応とはなんだろうか? 一般に警察が血痕らしい跡を見
つけると、それが本当に血痕なのか、それとも染料や調味料など血痕以外の物なのかを調べる。この検
査はルミノール反応を利用する。ルミノールとは下図のような物質で、鉄や銅を検出する反応である。
すなわち赤血球の鉄を検出するわけである。鉄分や銅分が存在すると蛍光を発する。ただし、微量血痕
はこの工程を省略する場合も少なくない。こうして、血痕であることが分かると、人血証明検査に移る。
すなわち、これが他の動物の血痕ではなく人間の血痕であることを確認するわけである。これには血清
を利用する。そして次に血液型検査を行う。以前は血液型決定基をタンパク質としていたが、最近では
糖鎖を利用する。このことにより、より古い血痕などからも分析が可能となった。現在では、エジプト
のミイラからもABO式の血液型を判定することができる。
 ・ルミノールはこのほかに、過酸化水素やシアンイオンの定量試験や、活性酸素検出に際して、増感
剤として使用される。また、血液鑑定のルミノール発光試薬は、ルミノール0.1g、無水炭酸ナトリウム
5.0g、30%過酸化水素水15.0mL、水100.0mLを混ぜて作る。これを噴霧して暗闇で見るとき、青白い
光を発すればそれは血液である。新鮮な血液よりも、日時が経った血液の方が敏感に反応する。これは
ヘミンが形成されるためである。

事故での鑑定

 ・1985年J○Lのジャンボ機の史上最大の航空機事故となった。生存者4名の救出を除き、その救助活
動のほとんどは、遺体の身元確認に費やされた。このような航空機事故は五体満足な形で亡くなる人は
少ない。運良く五体満足な形で発見された人や、特徴のある人以外は、臓器もつぶれ、見るに絶えない
遺体となる。そして運悪くそうなった方の身元確認は血液鑑定に頼られた。さらに時期が夏ということ
もあり、遺体の腐敗も早く、血液鑑定の資料となったのは主に毛髪と爪である。十数年前だったらこの
ような技術はなかったかも知れない。こうして半年あまりかけて519遺体すべての身元が確認された。


このように、血液型鑑定ははタンパク質の調査から糖鎖の調査に移り、飛躍的な進歩を遂げた。もちろ
ん、糖鎖部分の調査がタンパク質部分の調査に比べて有用であると言うわけではないが、分析する領域
が増えたことでその分野の研究が1歩も2歩も前進したことは確かである。



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